労働者の企業での働き方に関して、大きな転換点になるであろうと考えられる雇
用関連に関する制度が今年の4月1日から施行されることとなっている。
改正高齢者雇用安定法
まず、「改正高齢者雇用安定法」、いわゆる「70歳就業法」と呼ばれるもの。
これは、企業に雇用される労働者に様々な働き方を認めることによって、その働
き方を自由に選択できる環境を整えることを目的としているものだ。
現在の制度では、企業は従業員が希望すればそのすべてを65歳まで雇用する制
度を整備することが求められている。
さらに、この制度に加えてこの4月以降はさらに70歳まで就業させる制度の導
入に努めることが義務化されることとなる。
これには、定年の年齢引き上げ、定年制そのものの廃止、また継続雇用制度の導
入などの選択肢がある。
現状では、厚生労働省の調査によれば66歳以上でも継続して働くことのできる
企業は昨年6月1日の時点では3社に1社にとどまっている。
60代後半の就労の希望がすべて実現すれば、就業者数を押し上げる効果がある
ことへの期待があっての制度である。
ただし、準備が進まない企業が多いのが実情だ。
各企業への調査によれば、「考えていない」、または「今の時点ではわからな
い」だけでも半数に達するものとなっている。
また、前述の「就業者数を押し上げる効果があることへの期待」もその謳い文句
のとおりに運ぶとも考えられない。
企業としては、やはり若い労働者、賃金を抑えることができる上にその労働力に
期待ができるいわゆるコストパフォーマンスのいい人たちを雇用したいはずだ。
60歳を越えてくるようになれば、その労働に対する能力が確実に低下している
年齢層になっており、働かないのではなくて働きたくても頭と体がついていけな
くて働くことができない。
このような雇用者層にコストがかかり過ぎ続ければ、先ほどの若年層の雇用拡大
に歯止めがかかることも予想され、いくら大企業と言えどもその企業体質が弱く
なっていくことが考えられ、ひいてはこの国の景気浮揚の足かせともなりかねな
い。
雇用者側にとっても、もらえる年金がさらに遠のくといったことも考慮に入れる
こととなってくる。
4月以降の雇用情勢がどのように動いていくのか注視していく必要がある。
同一労働同一賃金
上記の「70歳就業法」とは別に、中小企業においては「同一労働同一賃金」が4
月から適用される。
同一企業内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で、合理的ではない賃金な
どの待遇の格差を禁止するものである。
すでに昨年4月には大企業では導入されており、パート雇用者の賞与が急増する
などの効果があらわれている。
しかし、大企業と違って企業体質の脆弱な中小企業においては新型コロナウイル
ス感染拡大の影響による景気後退に直撃されている企業も多く、「70歳就業法」
同様対応できているのは中小企業の半数程度にとどまるとみられている。
大阪は全国でも有数の中小企業の集積地として知られているが、これらのような
雇用に関する制度改革などについては各企業とも非常に敏感だ。
ではあるのに、すでに対応ができている、対応には問題がない、また、今後の対
応に前向きであるといった声は周囲からはほとんど聞こえてこないのが現実だ。
ほとんどの企業においては、その制度改革に頭を悩ませているものと考えられる
のだ。
行政によるさらなるバックアップが引き続き肝要である。