10月16日、巨人が広島に7対8で敗れてついに10連敗を喫した。4位・広
島に3ゲーム差と迫られ、3位の座も危うい状態に陥り盤石と思われていたクラ
イマックスシリーズ進出を不安視する声まで出るようになっている。この体たら
くは過去の大型連敗と何らかの相違点があるのかどうか、考えてみたい。
原監督の栄光と挫折
監督通算16年目を迎えた原辰徳監督は、これまでに優勝9回、日本一3回と輝
かしい栄光を手にした一方で、もう過去のものとして忘れ去られた感があるがと
んでもない屈辱も経験してきている。第1次政権の2003年には9月5日から
16日まで9連敗を喫した。この年就任2年目の原監督の辞任の呼び水となった
この大型連敗の時は、清原やペタジーニという主力がスタメン出場していたにも
かかわらず、連敗中の平均得点は「1試合3点」と自慢の打線が爆発しなかっ
た。このところの連敗に関しては、この時と似ているといった声がある。まず打
てない。そしてその結果、連敗中に優勝の可能性が完全に消滅したことも同じ
だ。目標を失って、ズルズルと負けてしまった印象は否めない。この2003年
の連敗の時は、9月17日の対中日戦で桑田が投げてやっとのことで連敗を止め
たものの、翌18日に当時の渡邉恒雄オーナーが原監督の続投について問われる
と、「20日からの対阪神戦で3連敗したら話は別だ」との発言があり、これを
受けてかどうか原監督は19日に辞任を申し入れ、その翌日に報道された。皮肉
にもその日から巨人は残り9試合で7勝1敗1分と大きく巻き返した。この辞任
の際には、甲子園球場での原監督のスピーチや当時の阪神の星野監督との抱擁な
どが記憶に新しい。この辞任後、その原監督が復帰した第2次政権の1年目の2
006年には6月6日から8連敗、18日から10連敗、さらに7月4日から9
連敗と3度の大型連敗があった。この時は、明らかにケガ人の続出が大きな理由
だった。5月下旬に開幕から5番を打っていた高橋が左肩痛で離脱。6月2日に
は小久保が右手親指を骨折した。阿部も右手親指打撲で6月下旬に抹消になり、
現在の巨人でたとえるなら、坂本、丸、岡本が打線から欠けるようなものだっ
た。この時はさまざま手を広げて緊急補強で対応しようとしたものの、あまりに
も欠けた3人の空いた穴は大き過ぎた。これだけ主力にケガ人が出れば、連敗は
仕方ない面もあった。そこで今年の10連敗だが、亀井が死球を受けて登録抹消
にはなったが、それ以外に主力の離脱はない。先発投手陣を見てみてもローテー
ションを崩さずに回っている。ケガ人が続出しているわけでもなく、メンバーは
変わっていない。むしろ、コロナで複数の選手が離脱した春先よりも戦力は充実
している。それなのに連敗が続いて立て直せない。責任は首脳陣にあると言われ
ても仕方がないし、原監督のあの絶妙な選手のやりくりや監督自身の神通力がな
くなったとも言えるだろう。
これからのこと
現在、残り試合が少ないとはいえ4位・広島に追い詰められてきていることは事
実だ。もちろん、クライマックスシリーズ進出に向けては圧倒的に巨人が有利な
のは変わりない。原監督は一昨年からセ・リーグ2連覇を果たしていることもあ
って、Aクラスに入れば留任となるだろう。しかし、万が一Bクラスに落ちてク
ライマックスシリーズ進出を逃したば場合、そこまでの状況に陥っても留任の線
は残っているだろうか。電撃辞任は十分あり得る選択肢となる。過去を見れば、
2008年に最大13ゲーム差から巨人に逆転優勝を許した阪神・岡田彰布監督
がフロントの慰留を断ってまで辞任している。2018年には巨人の高橋由伸・
前監督が3位に入ったものの3年連続で優勝を逃した責任を取って辞任となって
いる。その同じ年、阪神の金本知憲監督は最下位に沈み契約年数を残したまま辞
任した。今シーズンの残り試合は少なくなってはいるが、その結果次第では原監
督の去就も予断を許さない状況になってきていると言えるのだ。