日本で国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長に反発の声が上
がっている。
22日、今年夏の東京オリンピック大会の開催を巡り、バッハ会長は国際ホッケ
ー連盟(FIH)のオンライン総会に寄せた連盟関係者向けのビデオメッセージで
「東京オリンピック大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなけれ
ばならない。(そうすれば)選手は夢を間違いなくかなえることができる」と述
べた。
24日になって、このバッハ会長の発言が日本国内で報じられると、「だれに犠
牲を求めているのか」とネット上で反発の声が上がった。新型コロナウイルスの
感染が収まらないなかでもIOCは開催に向けて突き進んでいることは周知の事実
ではあるのだが、21日、IOC副会長で大会調整委員長のジョン・コーツ氏が東
京オリンピックは緊急事態宣言下でも開催できるとの認識を示したばかりだ。一
方で、同会議に出席した関係者は、「”犠牲”については参加する方も今までと違
った形なのでいろいろな制約があるけど、それは我慢してやるべきだというニュ
アンスと受け止めた」と述べた。インドのPTI通信によると、バッハ会長はビデ
オメッセージで、「東京オリンピック大会がようやく間近に迫り、最後のカウン
トダウンに突入した。現在の厳しい状況を受け、我々は団結や多様性、粘り強さ
を強いメッセージとして発信する必要がある。東京はトンネルの終わりの光にな
る」と開催に自信を見せており、選手村に入る70%以上のアスリートや大会関
係者がワクチン接種を受けたと語った。3月、バッハ会長は海外からの一般観客
受け入れを断念した際にも、日本側の意見を尊重するとした上で「誰もが犠牲を
払わないといけない」と声明を出していた。”犠牲”の具体的な内容については、
来日する関係者の削減や、選手村と競技会場など移動できる範囲の限定、新型コ
ロナウィルス感染の影響による予選中止や渡航制限によって起きる選手選考の変
更などを挙げていた。
ただ、この”犠牲”に対する犠牲者の詮索は無意味なものになりそうな気配だ。バ
ッハ会長が特に特定の誰かに”犠牲”を求めた、と言ったわけでもないようだし、
少なくともネット上で反発の声が上がっているような日本の国民に対して「犠牲
になれ」とバッハ会長が考えていると推測するのはいまのところでは無意味と言
えそうだ。