
国内外の富裕層が京都市内の不動産に熱視線を送っている。新型コロナウイルス
の感染拡大が続いているにもかかわらず、株高を背景に富裕層の投資マネーが流
入し続けているのだ。京都市中心部の地価は新型コロナウイルスの流行前に起き
た宿泊施設の建設ラッシュで高騰したが、それでもなお海外の富裕層にとっては
依然「割安」というふうにとらえられている。ただ、京都市が導入方針の別荘新
税(現在のところ仮称)が流れを変える可能性もある。
京都という街はこう語られる。「自然や名所、旧跡、おいしい食事が狭いエリア
に集まっている京都の良さは他都市にはない」。阪急阪神不動産(大阪市)によ
ると、北区と上京区で発売中のマンションのうち、3割程度がセカンドハウスと
して購入されたものであるということだ。中心価格帯はどちらも1億円前後で、
首都圏や関西圏の会社経営者の購入が目立つとのこと。新型コロナウイルス感染
拡大の影響下でも需要は大きく変わっていないとのことだ。別の事業者が手掛け
る京都市中心部のマンションも、成約者の半数近くがセカンドハウスとのこと。
不動産関係者の間には「『巣ごもり』中にネットなどで物件を探す時間が増えた
ことも一因」との見方もある。新型コロナウイルス感染拡大により外国人の入国
が難しくなったが、海外からの需要も底堅く推移している。外国人向け不動産仲
介の仁通(南区)によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響が出始める前に
すでに商談が進んでいた顧客がオンラインで購入を決めているとのことだ。タイ
やマレーシアからの問い合わせもあり、同社の劉丞社長によれば、「自由に来日
できない分、日本への思いが強まっている」とみられている。その購入者の多く
は来日経験が多い日本ファンということだ。堅調な需要の背景には、国際的に
「コストパフォーマンス」に優れた京都の不動産価格も影響している。経済成長
が著しい中国は「資産バブル」のまっただ中で、北京や上海、深圳では、円換算
で1平方メートル当たり250万円以上のマンションも少なくない。京都市内の
新築マンションは、不動産経済研究所調べによれば74.7万円となっており、
前述の劉丞社長は、「日本は治安が良いうえ、同じアジア圏のため生活習慣も似
ている。中国など海外からの不動産需要はコロナ収束後も大きく伸びる」と断言
する。
しかし、京都市が導入方針を固めたセカンドハウスや空き家向けの新税が正式に
決まれば、状況は変わる可能性がある。京都市の検討委員会での議論によると、
京都市中心部に立地する高層マンションの最上階で6万5千~43万円、右京
区・嵐山の一戸建て別荘で12万~43万円の課税額が想定されている。背景に
あるのは、所有者が生活していない住居の増加で、街中(まちなか)の空洞化
や、物件の高止まりによる子育て世代の市外流出が進むことに対する市の危機感
だ。不動産関係者は新税について「セカンドハウス需要の一定のブレーキにな
る」と口をそろえる。京都市は検討委から答申を受けた後、新税の詳細を詰める
方針だ。課税対象の判断基準の一つが「居住の有無」となっていることについ
て、検討委の特別委員を努める京都府不動産コンサルティング協会の西村孝平副
理事長は「複数の拠点で生活する人の増加や、仕事と休暇を両立するワーケーシ
ョンの浸透などで『居住』の概念は多様化している」と指摘する。
ただ、過去の例から見ると中国人による不動産投機の標的にされたオーストラリ
アは既に規制に乗り出している。日本でも既に北海道などで不動産の買占めが進
行している状況だ。華僑の経済力に悩まされる多くの国ではもうすでに外国人に
よる不動産所有は規制されている。当の中国でも、売買されているのは土地の有
期使用権であって所有権ではない。日本でも以前から規制されていてしかるべき
なのだが、政府は原発等の周辺土地を規制するだけでいまだに本腰を入れる様子
は見られない。利権にまみれた自民党政権ではよその国並みの規制すら難しいと
言わざるを得ない状況にある。