25日、プロ野球の日本生命セ・パ交流戦が全国各地で開幕し、合計5試合が行
われた。昨シーズンは新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となり、2年ぶ
りの開催となった。
甲子園球場では阪神対ロッテの試合が行われ、ロッテが5対3で勝利した。この
試合で、ロッテは鳥谷敬内野手が1対3のビハインドで迎えた7回表、反撃のの
ろしをあげる右前適時打を放ち逆転勝利に貢献した。2019年まで16年間所
属した古巣相手との初対戦で、交流戦最多出場、最多安打を誇るベテランが躍動
した。
代打がコールされた瞬間、甲子園球場には大きな拍手が起こった。この男には敵
も味方もない。1対3の7回表1死一、二塁、鳥谷は阪神西投手の3球目のチェ
ンジアップを捉え右前適時打を放った。かつての「虎の背番号1番」が一塁に到
達すると、球場に足を運んだファンからはスタンディングオベーションが送られ
た。 試合後、鳥谷は「久しぶりの甲子園で、甲子園のファンの前で打つことがで
きてよかった」と語った。これで自身の持つ交流戦の歴代最多出場を「33
9」、最多安打を「332」に更新した。甲子園球場での安打は阪神タイガース
時代の2019年9月22日の対DeNA戦以来611日ぶりだった。新型コロナ
ウィルス感染の拡大の下で7086人と寂しいスタンドが、この瞬間に満席のよ
うな熱気に包まれた。鳥谷の今季初打点が試合の流れを変え、ロッテは8回表に
逆転した。これで阪神が6回終了時にリードしていた試合での連勝を21で止め
た。「(代打は)1点でも欲しい場面だったのでよかった」と振り返った鳥谷の
仕事に対しては、井口監督も「本人としてもいい一本だったんじゃないかな」と
話した。
2019年のオフに事実上の戦力外通告で16年間在籍した阪神を退団し、翌年
の開幕を控えた3月にロッテ移籍した。2年ぶりの凱旋となったこの日の試合
前、鳥谷はチームの練習時間より1時間半以上も早い午後2時すぎにグラウンド
に現れた。そして阪神ベンチ前で矢野監督、梅野、大山、近本らと次々に笑顔で
あいさつし、「一緒にやった仲間なんで」と旧交を温めた。
この試合では元同僚も粋な演出をした。梅野が2回の登場曲で流したのは普段使
用するBigfumiの「Life」ではなく、Redfooの「Let’s Get Ridiculous」。こ
れは鳥谷の阪神時代の登場曲だったものだ。
鳥谷は昨年12月、18年目を迎える契約更改の席で、「プロに入った時に40
歳でショートを守りたいと思っていた」と話していた。6月26日に40歳を迎
えるが、余分な糖分を取らない肉体はプロ入り当時と変わらないものだ。自分に
厳しい姿勢の積み重ねである2098本目の安打を、新旧のチームメートに見せ
つけた格好だ。