新型コロナウイルス感染の再拡大を受けて政府が12日から適用する「まん延防
止等重点措置」をめぐって、東京都内の対象となる区域でさまざまな問題が起き
ている。
そのひとつ、JR三鷹駅の北側にあたる武蔵野市は対象となるが、南側の三鷹市は
対象となっておらず、その線引きをめぐってあたかも「南北問題」と呼ぶべきよ
うな問題が生じている。
筆者は大阪在住だが、東京の中野にちょっとした縁があってこのあたりにもなじ
みがある。
JR三鷹駅は駅の北側、武蔵野市の側にはビジネスホテルや官公庁があるのに対
し、駅の南側、三鷹市の側は商店街が広がるエリアで飲食店などが並ぶ。
ただし、もちろん北側にも飲食店はあって、三鷹駅を挟んで北側と南側とで対応
が異なることで混乱が生じる可能性は否定できない。
なお、東京都内での重点措置は23区とその他6市が対象となる予定となってい
る。対象の区域に含まれる飲食店の営業時間は現在の午後9時より1時間短い午
後8時までとするように求められる。もし時短の要請、命令に従わない場合は罰
金を取られる可能性もある。
政府も「なぜ東京都は三鷹市を対象に入れなかったのか」と語っている。加藤勝
信官房長官は、9日午前の記者会見で対象地域の選び方に問題がなかったかとい
う質問に対して、「やむを得ないというか、どこかで線を引けば必ずそのような
ことが出てくる」と説明した。さらに、国が対象の都道府県を選んだ上で各都道
府県知事が詳細な区域を選ぶという重点措置の制度について触れた後、「どう切
り分けるかは各都道府県の判断。今回は東京都が判断し今のような対象としてい
る」と述べた。
一方で、東京都の小池百合子知事は9日の記者会見で、「どこかで線引きをしな
ければいけないことから、店舗数、感染者数及び人口比などを総合的に判断して
決めた」と述べた。その上で、「三鷹に限らず、様々な線引きによって変わって
くることがあるかとは思うが、しっかりと対応して頂き、利用される方も基本を
守った対応をお願いしたい」と理解を求めた。
しかし、東京都に限らず、このような線引きを行えばどこであろうともその境界
線と言ったものは必ず発生するものだ。
武蔵野市と三鷹市の境界線は三鷹駅だけにとどまらず、その周囲にまで広く及ん
でいる。それをたまたま境界線上で目に付く三鷹駅のみに注目して議論するのも
どうかといった意見もある。
周囲の声に惑わされず、行政の正しい判断が求められる。