第93回選抜高校野球は東海大相模高校(神奈川)の優勝で幕を閉じた。
明豊高校(大分)はわずかにおよばず準優勝に終わった。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で選抜大会史上初めての中止となった昨年の
第92回大会で、明豊は出場を決めていた。
その前年の第91回大会では同高初となる春夏通じてのベスト4入りを果たして
おり、優勝の手ごたえをつかんでいたはずの昨年の大会であった。
さらに、昨年は夏の全国選手権大会までも中止となった。
それだけに今年の大会にかける意気込みは相当なものであったはずだ。
よくぞ頑張った、と声をかけずにはいられない。
大分県勢として54年ぶりに決勝の舞台まで駒を進めてきたものの、惜しくも届
かなかった明豊高校であるが、実は大分県勢は春・夏それぞれ1回ずつの優勝の
実績がある。
それが1967年春の第39回選抜大会、そして、1972年夏の第54回選手
権大会で優勝した津久見高校だ。
津久見高校といえば記憶に新しいところで言えば、ヤクルトでエースとして活躍
した川崎憲次郎投手であろう。
FA宣言によって移籍した中日では結局1勝も挙げられなかったものの、その実
績が色あせることはない。
昔の話で申し訳ないのであるが、筆者は1986年の夏、所用で大分県を訪れて
いたことがある。
ちょうどその折に、甲子園球場では第68回となる選手権大会が行われていた。
そこで活躍したのが同県の佐伯鶴城高校。
惜しくも準々決勝で敗れてしまったのであるが、同高が試合をしている時間帯は
何か街中がゴーストタウンにでもなったのかと思えるぐらい静かになったことを
思い出す。
大阪などに居ると、例えば大阪桐蔭高校などたいていは全国大会に出場すると上
位にまで食い込んでいくことがある意味当たり前のような感覚に陥って、勝ち進
んでいってもそれほどの盛り上がり感が味わえないことが多い。
しかし、上位にまで勝ち進むことが常ではないところではこういった現象はいま
だによく見られることだ。
現に、今回の明豊高校の決勝戦進出に関しては大分では号外まで出たほどだ。
昨年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で春の選抜大会の中止が騒がれてい
た際、他の高校生のスポーツ大会も中止になっているこの状況の中で、野球だけ
が特別視されるのはいかがなものか、などといった意見もよく聞こえてきたもの
であるのだが、この高校野球の盛り上がりを見るにつけ、やはりこの国において
は野球、それも高校野球は特別視されても当然のものであるのだと認識せざるを
得ない。
もはや、野球は単なるクラブ活動の域をはるかにはみ出してしまっている存在な
のである。