
今季のプロ野球は、新型コロナウイルスの感染拡大予防に基づく営業時間短縮要
請に対応するため、異例ともいえる延長戦無しの9回打ち切りの特別ルールで行
われることになった。昨年も延長10回打ち切りのルールであったのだが、さら
に1回短くなることで今季のプロ野球はどう変わるのか。考えてみたい。
かつて、ルール変更によって延長が12回までに短縮された際、また昨年のよう
に10回までで試合打ち切りとなった際にも同じような議論がなされて来てはい
るのだが、今回のように延長戦無し9回打ち切りのインパクトは今までのものよ
りもさらにインパクトのあるルール変更であると言える。
もちろん、今季限りの特別ルールではあるのだが新型コロナウイルスの感染拡大
の様子次第では来季以降も続く可能性は否定できまい。
昨年に比べるとたった1イニングではないか、といった声も聞こえてくるのでは
あるが、守る側はそのたった1イニングの3アウトを取ることがいかに難しいも
のであるか。反対に攻める側にとってみれば、もし負けているのであればそのた
った1イニングにどれだけの希望が持てるか。
この「1イニング」というのはとても重たいものであると言えるのだ。
引き分け試合の増加の影響は?
さて、この異例ともいえる9回打ち切りで野球が大きく変わる可能性は大きい。
これだけは確実に言えるが間違いなく引き分けが増える。
昨年、延長が10回に短縮された中でのシーズンで、セ・リーグで24試合、
パ・リーグで16試合の引き分けがあった。その前年の2019年はセ・リーグ
で7試合、パ・リーグで11試合、交流戦で4試合であった。
延長12回が延長10回に短縮された、つまり2イニングが短縮された昨季、そ
の前年に比べるといかに引き分けが大幅に増えたのかがよくわかる。
これを踏まえて考えるに、今季も引き分けが大きく増加すると予測される。
よく誤解されるのであるが、ペナントレースの優勝争いというものは勝利数では
なく勝率で決定される。
ここで、引き分けの多さが有利に働くといったケースもある。
かつて、1982年の中日ドラゴンズは過去最多の19試合の引き分けを記録し
て、勝利数はセ・リーグ3位に終わったものの、勝率で優勝を飾った。
今季は、この引き分けを巡って各球団のさまざまな駆け引きの応酬がみられるシ
ーズンになると考えられるのだ。