
今季のプロ野球は、新型コロナウイルスの感染拡大予防に基づく営業時間短縮要
請に対応するため、異例ともいえる延長戦無しの9回打ち切りの特別ルールで行
われることになった。
「プロ野球2021延長なし9回打ち切りで野球の何がどう変わる?」でも考え
てみたが、もう少し具体的な観点から考えてみたい。
まず、延長戦にもつれこんだらどうするのか?、というようなことを考えなくて
よくなる効果は大きい。つまり投手を温存する必要がなくなるわけで、出し惜し
みすることなく早め早めに継投につないでいくことができる。もちろんその時の
チーム事情、あるいはベンチ内選手の戦力によって変わってくるのであるが、同
点でも試合後半になるとそのチームでのいわゆる「勝利の方程式」をつぎ込んで
いくといったことができるようになる。昨季のように、たとえ1イニングとはい
え延長があれば同点の状況では早い回から勝利の方程式は使いづらかったはず
だ。やはり、1点でもいいから勝ち越した状況の中でないと勝ちパターンの投手
はどうしても出し惜しみしがちだ。特に、7回、8回、そして9回に大きな信頼
を寄せることができる投手を擁するチーム(阪神タイガースで言えば優勝した2
005年のJFKのような)が有利になってくる。
そう、延長戦を考えつつ試合の展開によって「1人投手を後ろに残しておこう」
「いや、やっぱり2人は必要か」というような配慮はいらなくなる。勝利の方程
式が固まっているチームは、7回、8回、9回にそれぞれ1人ずつの投手をつぎ
込んでいく野球が可能になる。
また、攻撃の方からみると代打を出すにしてもいわゆる「切り札」的な存在の打
者の使いどころは難しく、どうしても試合後半まで温存しがちであるが、これも
早い回からどんどん使われていくことが多くなってくると考えられるのだ。
セ・リーグとパ・リーグの違いは?
特にセ・リーグにその傾向が顕著なはずだ。
パ・リーグは投手が打席に立つことがないので、代打を出す場面というものはど
のチームをみてもだいたい同じようなものとなっている。しかし、セ・リーグは
そうはいかない。
継投のタイミングが難しいセ・リーグの方が9回打ち切りの影響は大きい。首脳
陣の投手交代の稚拙さ、タイミングの見誤りで場面はいくらでもある。
これだけのことを踏まえてみても、今季のペナントレースは大きく様変わりする
ことが容易に予想できるのだ。