国会で審議中の「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」、いわ
ゆる入管法改正案への批判が著名人の間に広まっている。7日には俳優の小泉今
日子さんがツイッターで反対を表明した。廃案を求める6日の記者会見には作家
の中島京子さんや星野智幸さん、温又柔さんらが参加し、いとうせいこうさんら
が連帯のメッセージを寄せた。反対世論が高まる中、与野党は7日、衆院法務委
員会での採決を先送りした。審議の行方に厳しい世論の視線が注がれている。
「#難民の送還ではなく保護を」。小泉さんは7日朝、そんなハッシュタグ(ラ
ベル)をつけて、6日の記者会見に関するツイートをリツイートした。これは、
自らが代表取締役を務める「株式会社明後日」のアカウントでの発信だ。このツ
イートは、3月に名古屋出入国在留管理局で死亡したスリランカ人女性ウィシュ
マ・サンダマリさん(当時33歳)の妹2人が「小さいころから日本が好きだっ
た」などと記者会見で語ったとの内容だ。テレビの報道番組や映画、ドキュメン
タリーを制作している有志による「Choose Life Project(チューズ・ライフ・プ
ロジェクト、CLP)」が投稿した。小泉さんの投稿は8日夕までに1500件以
上リツイートされており、「いいね」も3300件を超えた。小泉さんは、政府
が検察幹部の定年を延長できるようにする検察庁法改正案に対しても「もう一度
言っておきます!#検察庁法改正案に抗議します」と2020年5月10日にツ
イートした。その後、同案は廃案になった。入管法改正案に反対するある野党議
員は「あのツイートが潮目を変えた」と振り返る。ちなみに「#検察庁法改正案
に抗議します」と最初に投稿した東京都内の女性「笛美」さんも、入管法改正案
への反対をツイートしている。6日の記者会見では、直木賞作家の中島京子さん
が入管法改正案への反対を明言。星野智幸さんは「この法案は、法治主義、民主
主義を信じる私には受け入れられない。みなが無関心でいる間に、権力が暴力に
変質した」、温又柔さんは「今回の法案はよくない方向へ向かっている。私は反
対です」とそれぞれ述べた。いとうせいこうさんは「孤立している人を助けない
ことで私たちが世界から孤立する。入管法改悪に反対します」とのメッセージを
寄せた。中島さんは毎日新聞のインタビューでも「入管施設に収容されている人
に何をしてもいいとみなされているのではないか。一部のカテゴリーの人たちが
死んでもいいとみなされる社会ではあってほしくないですし、そうした社会に生
きていたくないと私は思います」と話している。
入管法改正案とは
入管法改正案は強制退去処分を受けた外国人の収容長期化の解消や送還の促進な
どを目指している。しかし、3回以上の難民認定申請者の強制送還を可能にし、
送還拒否者を罪に問えるようにする内容などが問題視されている。国連難民高等
弁務官事務所や国連人権理事会の特別報告者らは「国際的な難民保護の水準を満
たしていない」と疑問視している。国会での審議日には、法案に反対する人たち
の座り込みが続く。ある関係者は「支持してくれる世論の高まりを感じる。以前
は法案を支持していた議員からも法案に批判的な声が聞こえるようになってき
た」と話す。衆院法務委での審議は来週にも再開される予定だ。