
3月31日、オンキヨーホームエンターテイメントは2021年3月期の決算が
債務超過見込みとなったことを受けて、東京証券取引所の上場廃止基準に抵触す
る見込みになったと発表した。これにより、7月末頃に上場廃止となる見込みと
なった。
オンキョーは、昨年9月25日付で債務超過の規程に基づき上場廃止に係る猶予
期間入り銘柄になっていたもの。上場廃止の回避を目的として、新株予約権の発
行なども実施していたが、支払遅延の解消の遅れや部品の供給状況の逼迫などに
よる売上と利益の減少が見込まれることに加えて、旧アメリカ販売代理店の経営
状況悪化による貸倒引当金の計上を見込んだことなどによって業績予想における
当期純損失は59億8000万円となり、結果として債務超過解消のための不足
額が23億1900万円残る見込みとなった。
かつてはオンキョーといえばオーディオファンをとりこにしてきた。
豪華なステレオのその左右にはオンキヨーのスピーカーが鎮座していたものだ。
それも今は昔。
オンキョーは業績悪化に苦しみ、過去最大の赤字、そして債務超過の状態に陥っ
て2021年3月末までにそれを解消できなければ株式上場廃止のおそれがある
といわれていた。
「オンキョー」は大阪が創業の地である。1946年「大阪電気音響」として発足した。
その後、音にこだわった製品を次々と世に送り出して日本を代表するオーディオ
ブランドへと成長を遂げた。
それが2014年3月期の決算から5期連続の最終赤字に陥る。2020年3月
期の決算では98億円余りと過去最大の赤字を記録、33億円の債務超過に陥っ
た。東京証券取引所の元来のルールでは、2年連続の債務超過は十分上場廃止と
なりえるものである。
オンキョーはなぜ衰退した?
ここに日本の製造業にありがちな構図が透けて見える。
今や、オンキョーをはじめ日本のオーディオメーカーの製品がいわゆる重厚長大
の典型ともいえるのだ。
さらにその衰退の一因として、アップルの存在が挙げられる。
アップルは2003年、音楽をインターネットを使ってダウンロードして聞くと
いったスタイルのiTunesのサービスを始める。
それまではCDを購入して聴くのが当たり前だった音楽をインターネットという
ものを通じてより便利で身近なものに変えていった。
2007年にはiPhoneが発売される。音楽はスマートフォンの中に取り込まれ
るようになり、音楽のデジタル化が急加速していくこととなった。
そして、この市場の変化はオンキョーの想像をはるかに超える早さだった。
何よりスマートフォンの中に音楽が取り込まれたことによって、音を再生するオ
ーディオ機器の存在意義が急速に薄れていった。
また、オンキョーはその市場が縮小しているにもかかわらず売り上げを維持する
ことに固執し続けるあまり、ミニコンポなど幅広い価格帯の製品を大量に売り出
し続ける戦力を取った。このことが逆に開発費を高騰させ、さらに収益を悪化さ
せることになった。
今後のオンキョーがどうなっていくのかはまだわからない。
今後の発表に注視していきたいところである。