14日、中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は記者会見において、
日本政府が東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出方針を決めたことに対して
「海洋は日本のごみ箱でなく、太平洋も日本の下水道ではない」と強く非難し
た。中国側としては、「さらなる反応の権利を留保する」と表明しており日中間
の新たな外交懸案になる恐れがある。
趙氏は、処理水の海洋放出について「日本は、本当に国内外の疑義や懸念の声
を聞いているのか」と批判した。そのうえで、日本の水俣病を挙げて「日本は歴
史の悲劇を忘れるべきでない」と語った。
また、麻生太郎財務相が処理水について「飲んでも何てことはないそうだ」と
述べたことをふまえて、「飲んでから、再び言ってもらいたい」と批判した。
さらに、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が国際海洋法裁判所に提訴する
ことを検討するよう指示したことについて、「韓国の措置に注意を払っている。
日本が国際社会の懸念を重視することを望む」と語った。
これに対して、16日、麻生太郎財務相は閣議後の記者会見で、東京電力福島第
1原発の処理水に関する発言をめぐって中国側が反発していることについて問わ
れ、「太平洋は日本の下水道ではない、と言ったそうだが、じゃあ中国の下水道
なのかね。みんなの海じゃないのかねと思うね」と語った。
処理水に残留する放射性物質トリチウムの濃度は、海洋放出する際に世界保健
機関(WHO)の飲料水の水質ガイドラインである7分の1の水準まで希釈され
ている。それについて麻生氏は、「そこが一番肝心だ」と強調し政府が科学的根
拠に基づいて対応していると語った。
これより前、13日の会見で麻生財務相は処理水のトリチウム濃度は中国や韓
国が海洋放出しているものより低いと指摘したうえで、「飲んでも何てことはな
いそうだ」と発言した。これに対して、上述のとおり中国外務省は14日の会見
で「飲めるというなら飲んでみてほしい」とした上で、「太平洋は日本の下水道
ではない」と非難していたものだ。