30日、甲子園球場にて行われたプロ野球エキシビジョンマッチ阪神対西武の一
戦は3対2で阪神が辛くも逃げ勝った。

佐藤輝明の一撃
この試合の8回裏阪神タイガースの攻撃で、目の覚めるような一撃が蒸し暑い甲
子園の上空を切り裂いた。ルーキー佐藤輝明がエキシビジョンマッチ通算4戦目
にして実に4発目となる決勝アーチを右翼席にたたき込んだ。これは前半戦で苦
手としていた内角ベルトゾーンの直球を完璧に捉えた一撃だった。ボールの見極
めをテーマにしているという佐藤が、後半戦開幕を前に新たな境地へと一歩前進
した。打った瞬間乾いた打球音が甲子園球場に響きわたり、佐藤はもう本塁打を
確信、打席の中で静止し放物線の行方を見つめた。打球速度178キロ、飛距離
137メートルの豪快アーチだ。エキシビションマッチ4発目が右翼席中段に突
き刺さると、場内からは大きなどよめきが起こった。佐藤は、「すごいいいホー
ムランだったと思います。(打球速度も)速ければ速いほどホームランになる確
率が高いので良かったです。」と自画自賛の一発となった。2対2のタイスコア
で迎えた八回1死の場面だった。西武十亀が内角ベルトゾーンに投じた143キ
ロ直球をフルスイングではじき返した。このコースに対する直球は前半戦では
0.095、0本塁打と大苦戦を強いられてきた。開幕から執拗に攻められ続け
てきた1球だったが、物の見事にたたき込んだ。佐藤の進化の一端を示す打席内
容には試合後の矢野監督も、「ファウルになったり、凡打になっていたところを
一発で仕留められている状態というのが、今のテル(佐藤輝)のいいところ」と
目を細めた。佐藤が今、打席の中で意識しているポイントは打つべきボールを絞
って打つことだ。佐藤は、「インコースでも打てるところは打っていって、見逃
すべきところはしっかり見逃すことを意識している」と語る。打てるボール、打
てないボールを瞬時に判断した上でスイングすることが、弱点を克服するための
道しるべとなっているのだ。だからこそ後半戦開幕までは、「ストライク、ボー
ルの見極めや追い込まれてからの選球眼ですね」とボールを見極める力を養う方
針だ。
これでエキシビションマッチ4戦4発と手応えを深めつつある。ひと皮むけたバ
ットの勢いは、そう簡単には止まりそうにない。ただ、所詮はエキシビションマ
ッチ。レギュラーシーズンが始まればそうはいかない、といった声が聞こえてく
るのも事実。この好調さをいつまで維持できるか。阪神にとっても佐藤にとって
も今にでもシーズン再開といきたいところではなかろうか。