29日、メットライフで行われたプロ野球セ・パ交流戦、西武対阪神の一戦は1
-0で西武が勝利してこれで3連戦の通算成績を1勝1敗のタイとした。
阪神矢野燿大監督は、ルール違反となるのは承知の上で、それでも言わずにはい
られなかった。阪神は西武に0-1で敗戦。ロハスの最後の左邪飛を巡って、矢
野監督がリクエストによるリプレー検証の結果が出た後も、審判団への抗議を行
った。悔しい無得点負けとなったが、指揮官の勝利への執念をカード勝ち越しへ
とつなげる執念。 ベンチに座ったまま立ち上がれない選手たちのためにも、ファ
ンのためにも、あのまま帰るわけにはいかなかった。ネット際の際どい打球と、
微妙な判定。リクエストにかけたがアウトの判定は変わらず、ゲームが終わっ
た。だが、矢野監督は目を血走らせ、審判団と向き合った。ルール違反だろうが
なんだろうが、言わなくてはならないことはある。試合後になっても執念の猛抗
議を見せた。矢野監督は、「もちろん、ビデオ判定(リプレー検証)の後に抗議
ができないのは分かっているんだけど。でも、俺らも確信はないんだけど、上の
方に当たったように見えたから。だけど、映像的には確実に当たっているものが
ないし。撮れてないんだよね、たぶん。当たってるというのがあったとして
も。」と話した。ルールも、事情もすべて分かっていた。だが、食い下がらずに
はいられなかった。その打球は、開幕から25戦連続無失点を続けていた平良を
追い詰めていた0-1の九回2死二塁で、ロハスのバットから生まれたものだ。
左翼ファウルエリアに高く舞い上がった白球が、今季から新設された高さ20メ
ートルの防球ネットの、際どいところへ落ちてきた。西武の左翼・岸がもたれか
かりながら捕球した。だが、グラブに収まる以前に、上空で一度ネットに触れた
ようにも見えた。最初の判定はアウト。検証の結果もアウトのままで幕切れを迎
えた。 そして、大型ビジョンで歌手の松崎しげるが西武ライオンズの球団歌を熱
唱する映像が流れ、ヒーローインタビューの準備が整えられる中であっても矢野
監督は約3分にわたって食い下がった。この場合は試合終了ではあったが、検証
後の判定に抗議すれば、本来なら退場となり制裁を受ける。だが、矢野監督は引
かなかった。 対応した球審の木内審判員は「本来であればリプレー検証後の抗議
はないんだからやめてくれという話をしたら(矢野監督から)『いや、言わせて
くれ』というようなことを言われたので。そういうやり取りです。」と説明し
た。さらに木内審判員は、「われわれはわれわれの仕事をしただけで、矢野監督
も『確認』ということだったんだと思います」と続け、抗議とは受け止めなかっ
たと話した。矢野監督も「本来はできないということも分かっているんだけど
ね。試合終了だし、覆すこともできないし。」と思いを飲み込むようにして語っ
た。前夜はルーキー佐藤の華々しい3発で最高の勝利を収めた。この日も終盤の
ドラマでひっくり返したかったが、ほとばしる勝利への執念は試合後となっても
審判員への『確認』で熱く示した。あとは30日、3戦目に勝って、甲子園に帰
るだけだ。