大阪府と大阪市が「大阪都構想」の代案と位置付ける広域行政の一元化条例案が
4月1日より施行されることが確定した。
これは、すでに24日に大阪府議会にて成立していたものが、26日に大阪市議
会において大阪維新の会と公明党の賛成多数で可決成立したことを受けてのも
の。
大阪市議会では議長らを除く81人で起立採決され、大阪維新の会と公明党の合
わせて57人が賛成し、自民党や共産党などの24人は反対した。
この大阪都構想代案については、大阪市を廃止して特別区に再編する都構想が昨
年11月の住民投票で否決された直後に、松井一郎大阪市長と吉村洋文大阪府知
事が制定を目指す意向を表明していたものである。
可決後、松井市長は「都構想が実現しない中で二重行政を抑え、府市の対立を無
くすためのルールができた」と語った。
また、吉村知事は、「府と市が同じ方向性で都市戦略を実行していく。その第一
歩を踏み出すことができた」と述べた。
さらに、自民党の川嶋広稔市議は採決に先立つ討論での発言で、「市の権限は府
に委託されるが、財政負担などのリスクは市民が負う。自治権の放棄といえる行
為だ」と訴えた。
どのような内容なのか
その内容としては、大阪市の都市計画と成長戦略の事業を大阪府に委託して権限
を移す内容となっており、政令市の中核的な権限がその道府県に移行するのは全
国でも初めてのケースとなる。
また、「二重行政の解消」を基本理念に掲げており、府知事が本部長、市長が
副本部長を務める「副首都推進本部会議」で府への委託事業を協議して詳細は事
業ごとに規約で定めることとなっている。
府が主導する政策決定を懸念した公明党の修正要求を受けて、府と市が対等な立
場で会議を運営することなども明記された。
具体的な事業内容については条例施行後に決定されることとなっているが、広域
交通網の整備や2025年開催の大阪・関西万博の準備、カジノを含む統合型リ
ゾート(IR)の誘致などが想定されている。
大阪維新の会は、当初の案では大阪都構想の制度案と同様に市の広域行政に関わ
る427の全ての事務の権限及び2000億円に上る財源を府に移すことまでを
その内容に盛り込んでいた。しかし、大阪都構想での協力を取り付けた公明党の
反発、そして国との調整などを受けて最終的には都市計画と成長戦略の2分野に
絞る形になった。
大阪都構想の実現へ向かって
結局のところ、大阪維新の会としてはどうしても大阪都構想を実現させなければ
一歩も引かないといった印象を植え付けたことは否めない。
3回目となる住民投票も現実味を帯びてくる。
とはいえ、非常に危うい案と言えなくもない。
この条例は、簡潔に言ってしまえば政令指定都市である大阪市が持つ権限と財源
を実質的に大阪府に差し出す内容となっている。
もし今後、大阪府と大阪市のどちらか、あるいは両方共が大阪維新の会の方では
なくなった時にどうなるか。
府知事と市長が対立した際には大混乱に陥ることは明白である。
さらに言えば、あの2回にもわたる住民投票とは一体何のためのものであったの
だろうか。投票のたびに費やされた税金は無駄なものであったのか。
大阪市の人間としては、何とも釈然としない今回の条例可決となってしまったと
言えるのだ。