日本で新型コロナウイルス感染拡大に思ったほどの歯止めがかからない状況につ
いて、世界各国は日本のことを注視している。アメリカ国務省は24日、日本に
対する渡航警戒レベルを4段階のうちで最も厳しい「渡航中止の勧告」に引き上
げた。アメリカ疾病対策センター(CDC)も、「日本の現状を踏まえると、ワク
チン接種を完了した旅行者でも変異種に感染したり広めたりする危険性がある」
と警鐘を鳴らす。
こうした状況の下で、2カ月後に迫った東京オリンピックを開催できるのであろ
うか。アメリカのオリンピック委員会(USOPC)は渡航中止の勧告に対して
は、「オリンピックの参加への影響はない」と声明を発表し、日本政府も開催の
方向で突き進んでいる。加藤勝信官房長官は25日午前の記者会見で、「東京オ
リンピック競技大会の開催を実現するとの日本政府の決意を支持するというアメ
リカの立場にはなんら変更はないと考えている」と述べた。
日本国内からは、「USOPCは立場上、オリンピックを中止にするとは言えない
だろう。常識的に考えれば、渡航中止の勧告が出ている国で2カ月後にオリンピ
ックを開催するなど考えられない。日本政府も後に引けない状況で、答弁が苦し
くなっている。」といった声が上がる。
アメリカでは大手メディアが次々、オリンピック開催に異を唱えている。ワシン
トン・ポスト(電子版)も5日のコラムで、日本政府に対し東京オリンピックを
中止するように促している。コラムでは、国際オリンピック委員会(IOC)のバ
ッハ会長を「ぼったくり男爵」と痛烈に批判している。オリンピックの開催の目
的ははっきりと「カネだ」と断じており、日本は「オリンピック中止で損切りを
すべきだ」と訴えた。また、ロサンゼルス・タイムズ(電子版)も18日、今夏
の東京オリンピックについて、「中止しなければならない」とする記事を掲載し
た。
ヨーロッパでは
イギリスに駐在する日本人ジャーナリストは、「イギリス人たちに『東京オリン
ピックを本気で開催する気か、日本はワクチンの接種率が低いから、オリンピッ
クどころではないだろう』とよく聞かれる」と明かした。
さらに、「イギリスは新型コロナウイルス感染対策で1月からロックダウンして
いたが、3月から小売店が約3カ月ぶりに営業を再開し、今月になって飲食店や
パブも営業が解禁されるようになった。ただ、それが実現できたのもワクチン接
種率の高さが大きな要因だ。日本は7月末までに高齢者向けのワクチン接種を終
了させ、9月末までに希望する全国民向けの量を確保するという方針だが、あま
りにも遅すぎる。日本国民全員にワクチンが届く前に、世界中の人たちが集まる
東京オリンピックを開催することをヨーッロッパの人達は理解できない」と続け
た。
インドで確認された変異株が世界中で猛威を振るい、日本でも感染者が確認され
ている。オリンピック開催に世界中が疑問を抱く中、日本でも開催中止を望む声
が日に日に高まっている。菅義偉首相は4月20日の衆院本会議で、「人類が新
型コロナウイルスに打ち勝った証しとして(東京オリンピックを)実現する決意
に何ら変わりはない」と述べたが、いまだに打ち勝ったと証明できていないのが
現状なのだ。十分な説明責任を果たさないままで国民が不安を抱いたこの状況下
で、このままオリンピック開催に突き進んでよいのだろうか。今後、何らかの動
きがあるのかどうかに注視していく必要がある。